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樹脂添加剤の基礎知識

樹脂添加剤の種類と特徴~機能付与剤~

機能付与剤について

機能付与剤は、樹脂の物性を改善したり、樹脂が本来持たない特性を付与したりする添加剤です。機能付与剤の添加によって樹脂の適用範囲は拡大され、それぞれの樹脂がより広範囲の用途で使用できるようになります。代表的な機能付与剤の種類・特徴などは以下のとおりです。

可塑剤

可塑剤

可塑剤は、ポリマー分子間に浸透してポリマーの分子間力を弱め、それぞれの分子鎖を動きやすくすることによって、ポリマーのガラス転移点を低下させ、ポリマーに柔軟性を与えます。特に、ポリ塩化ビニルは可塑剤の添加量によって自由に柔軟性をコントロールでき、多くの用途に適用させることができます。
可塑剤は樹脂に対し多量に配合されるため、樹脂との相溶性が良いことが必須ですが、それに加えて、揮発性の少ないことや耐熱性に優れること、耐候性に優れることなど多くの特性が必要となるため、それらを満たす種々の可塑剤が開発されています。

エポキシ化植物油:エポキシ化大豆油(ESBO)、エポキシ化アマニ油(ELSO)

安定剤としても働き、可塑剤兼安定剤として使用されている。

フタル酸エステル類:ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)

最も汎用的な可塑剤として多くの軟質塩ビに配合されている。

ポリエステル系可塑剤:二塩基酸(アジピン酸、セバチン酸、フタル酸など)とグリコール類(1、2-プロパンジオール、ブタンジオールなど)のポリエステル

保留性良好、低揮発性、非移行性、耐熱性に優れるがDOPと比較すると相溶性、耐寒性に劣る。

核剤・透明化剤

核剤

結晶性樹脂であるポリプロピレンに、核剤・透明化剤を添加すると、成形加工時にその結晶を微細にコントロールすることができます。曲げ弾性率や熱変形温度などの物性が著しく向上するとともに、透明性が著しく向上します。
また、結晶化温度も向上することから、成形サイクルの短縮にもつながり、生産効率の向上、コスト削減に寄与します。核剤・透明化剤は多領域で効果を発揮する多機能の添加剤といえます。

カルボン酸金属塩系:パラ第三ブチル安息香酸AI塩、安息香酸Na

比較的古くから使用されている造核剤で物性向上、結晶化温度向上で効果あり。透明性では効果なし。

ソルビトール系:ジベンジリデンソルビトール、ジ―アルキル―ベンジリデンソルビトール

物性改良効果は小さいが透明化剤としては効果的。熱安定性が悪く、成形加工中に分解し原料のベンズアルデヒド類の臭気を発する。

リン酸エステル金属塩:リン酸エステルナトリウム塩

物性改良、加工性改良効果で最も優れる。透明化剤としての効果もある。耐熱性、耐加水分解性良好。透明性改良用途向けに分散性改良タイプが開発されている。

難燃剤

難燃剤

難燃剤は、プラスチック製の電線、電気機器、OA機器等が使用中に高温にさらされ、樹脂が燃焼する可能性のある場合に使用されます。
作用機構としては、難燃剤自体が分解して水を生成し、その蒸発潜熱で樹脂温度を低下させるもの、燃焼の反応サイクルを化学的に抑制するもの、発泡層を形成して熱や酸素を遮断するものなどが開発されています。

帯電防止剤

帯電防止剤

プラスチックはほとんどが絶縁体であるため、さまざまな摩擦により発生した静電気が逃げにくく、帯電しやすい性質があります。そのためほこりや汚れが付着しやすく、OA機器類のノイズ発生などが大きな問題となっています。こうした問題を防ぐため、多くの帯電防止剤が塗布型と練り込み型として開発され、プラスチックに活用されています。
電荷を逃がすための親水基と、プラスチックとの親和性を向上するための疎水基を分子中にあわせ持つ、界面活性剤をベースにしたものが多くあります。

アニオン系活性剤:アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩など

帯電防止能は一般的に他の系統の界面活性剤より劣る。

カチオン系活性剤:第4級アンモニウム塩型、第4級アンモニウム樹脂型、アルキルアミンサルフェートなど

帯電防止能が大きく、プラスチック練り込み用、合成繊維仕上げ工程用として使用されている。第4級アンモニウム塩型が最も帯電防止効果に優れるが着色しやすい欠点を持つ。

非イオン活性剤:グリセリンモノ脂肪酸エステル類、脂肪酸ジエタノールアミドなど

耐熱性に優れ、樹脂との相溶性も良いためプラスチック練り込み用として使用されている。

両性活性剤:アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリウムベタイン型

アルカリ性・酸性どちらの条件下でも使用可。帯電防止能は比較的良好であるが熱による着色の問題がある。

滑剤

滑剤

滑剤は、プラスチックの成形加工において、プラスチックと成形加工機の摩擦およびプラスチック粒子間の摩擦を低減させます。プラスチックの流動性や離形性を改善し、加工効率向上や成形品の外観改善に効果的です。
外部滑剤として働くものと、内部滑性に効果を発揮するものがあり、通常、両者が組み合わされて使用されます。

炭化水素系滑剤:パラフィンワックス、合成ポリエチレン、流動パラフィン

代表的な外部滑剤で化学的に安定。

脂肪酸、高級アルコール系:ステアリン酸、ベヘニン酸、12ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール

外部滑剤として作用するがアルコール系は内部滑剤として作用。

脂肪酸アミド系:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド

酸アミド類はポリプロピレン、ポリエチレン用、アルキレンアミド類はポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS用。

金属せっけん系:ステアリン酸Ca、Zn、Mg、Pb

滑剤であるとともにポリ塩化ビニル用安定剤としても使用される。ポリ塩化ビニルではZn塩、Pb塩は外部滑剤として、Ca塩、Mg塩は内部滑剤として使用される。

エステル系:グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレートなど

内部滑性と外部滑性の両方の性質を持つ。

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