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サステナビリティ

TCFD提言に基づく情報開示

TCFDとADEKAグループの方針

 ADEKAグループは2022年2月に、TCFD*賛同を表明しました。
 世界的に脱炭素社会実現への取組みが加速するなかで、当社グループは特に環境面において、サステナビリティ優先課題として掲げる「地球環境の保全(GHG排出量削減等)」「環境貢献製品の提供」を積極的に推し進め、サプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献してまいります。
 今後もTCFD提言に沿って気候変動が事業活動に与える影響を分析・評価し、複数のシナリオに基づく対応策を策定し、事業のレジリエンス向上を図るとともに、これらの取り組みをステークホルダーの皆さまにより分かりやすくお伝えできるよう発信してまいります。

*TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース。金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対して気候変動による影響を分析・評価したうえで「ガバナンス」「リスクマネジメント」「戦略」「指標と目標」の4項目について開示することを推奨している。

ガバナンス

気候変動対応にむけたガバナンス体制 気候変動対応にむけたガバナンス体制
1.気候関連リスク・機会に対する取締役会の監督
ADEKAグループでは「サステナビリティ優先課題」を決定する際に「気候変動への対応」を、優先して取り組む社会的課題のひとつに挙げています。
GHG排出削減量のKPI検討(2030年、2050年)などの重要な審議は、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」(2022年は5回開催)にて実施しています。
気候変動に関連する課題を含む重要な決議事項に関しては、取締役会に報告しており、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えています。
2.気候関連リスク・機会を評価、管理する上でのマネジメントの役割
事業活動における気候変動関連のリスクと機会の適切な評価・管理を推進していくために、サステナビリティ委員会は、委員長は代表取締役社長、委員は常勤取締役及び常務執行役員、上級執行役員、環境・安全対策本部長が務めています。
下部組織であるサステナビリティ推進部会での討議によりサステナビリティ委員会への上程案を作成し、サステナビリティ委員会では、気候変動関連課題の方針決定、施策の審議とモニタリングを行います。
従って、サステナビリティ委員会の委員長である代表取締役社長は、気候変動対応に関する方針決定、リスクや機会への取組み推進、目標達成等について責任を負っています。

リスク管理

  • 1.気候関連リスクの識別・評価・マネジメントプロセスの組織全体の総合的リスク管理への統合プロセス

     ADEKAグループでは、全社レベルのリスク管理として、グローバルリスクマネジメント、クライシスマネジメント、事業継続マネジメント、情報セキュリティ等のほか、当社独自の概念である「4つの安全」(労働安全、環境安全、品質安全、設備安全)によるPDCAサイクルを用いた継続的な取り組みを行っています。一方、ESG側面のリスク・機会の識別・評価を行うことに関しては、以下のマネジメント体制を敷いています。

  • 2.気候関連リスクの識別・評価のプロセス
    ADEKAグループでは、サステナビリティ委員会の直下にサステナビリティ推進部会を設置し、GHG排出量、ならびに会社の財務への影響度合い等の観点から、会社全体を包括する重要な気候関連リスクと機会の抽出・評価を行っています。
    重要リスクと機会の評価は、サステナビリティ委員会で審議の上決定し、取締役会に報告しています。
    ADEKAグループ・サステナビリティ優先課題の中で、気候変動問題は重要な課題として、優先課題「地球環境の保全」「環境貢献製品の提供」の両方に含まれています。
  • 3.気候関連リスクのマネジメントプロセス
    ADEKAグループでは、気候変動問題はサステナビリティ優先課題に含まれるものとして、その取組みの進捗を定期的にサステナビリティ推進部会で討議し、さらにサステナビリティ委員会に報告して審議・承認を行っています。
    進捗を評価する項目
    (1)サステナビリティ優先課題で定めているKPI
     ①「地球環境の保全」・・・GHG排出量
     ②「環境貢献製品の提供」・・・「環境貢献製品」売上高
    (2)TCFDの要件に照らした活動の進捗

戦略(考え方)

  •  TCFD提言は、戦略の開示にあたり、2℃以下のシナリオを含む複数の気候シナリオで分析を行うことを推奨しています。そこで移行面での影響が顕在化する「1.5℃/2℃未満シナリオ」と、物理面での影響が顕在化する「4℃シナリオ」を設定しました。

     対象とする事業を選定し、以下のステップに基づいて、原料調達から製品需要のバリューチェーン全体を考慮して、気候変動リスク・機会を抽出し、事業へのインパクトや対応策の検討を行っています。

  •  シナリオ分析の対象は、当社グループの全事業としました。(樹脂添加剤、情報・電子化学品、機能化学品、食品、ライフサイエンス)

     中期経営計画における「カーボンニュートラルに向けた取り組み」を踏まえ、中期的なマイルストーンとして排出量削減目標を設定した「2030年」と、長期的なマイルストーンとしてカーボンニュートラル達成を目指す「2050年」について、シナリオ分析を行っています。

      シナリオとしては、具体的には、国際エネルギー機関(以下、IEA)によるNZE(1.5℃シナリオ)やSDS(2℃未満シナリオ)、国連気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC)によるRCP8.5(4℃シナリオ)やRCP2.6(2℃未満シナリオ)などを参照しています。

戦略(設定シナリオ)

設定シ
ナリオ
移行シナリオ
(1.5℃/2℃未満シナリオ)
物理シナリオ
(4℃シナリオ)
社会像 今世紀末までの平均気温の上昇を1.5℃や2℃未満に抑え、持続可能な社会を実現するため、大胆な政策や技術革新が進む。脱炭素社会への移行に伴う変化が、事業に影響を及ぼす。
<事例>
・炭素税の導入
・自動車のEVシフト など
パリ協定に即して定められた約束草案などの各国政策が実施されるも、今世紀末までの平均気温が成り行きで最大4℃まで上昇する。気候の変動が事業に影響を及ぼす。
<事例>
・風水害による被害の増大
・平均海面水位の上昇 など
参照シ
ナリオ
  • 「NZE」(IEA WEO2022)

  • 「SDS」(IEA WEO2021/ETP2020)

  • 「RCP2.6」(IPCC AR5)
  • 「RCP8.5」(IPCC AR5)

  • 「STEPS」(IEA WEO2022/ETP2020)
リスク
と機会
移行リスク・機会が顕在化 物理リスク・機会が顕在化

戦略(財務影響評価)

設定したシナリオに基づき、当社グループにおける気候変動関連のリスク・機会を整理し、その規模や時間軸についても評価しました。
2030年時点の想定(GHG排出量、炭素税による影響)を下記の通り行いました。
2030年 当社グループGHG排出量見通し
(排出量削減目標を達成・事業成長も考慮)
2030年 炭素価格の将来予測に基づく
炭素税による追加コスト負担の想定
123千トン(Scope1+2) 20億円

※外部シナリオ「WEO2022 NZEシナリオ」における、2030年時点の炭素価格(先進国:140$/t-CO₂、新興国:90$/t-CO₂)、1$=130円想定での日本円換算。

戦略(主要なリスクと機会、影響度、対応策)

  • 【対象事業】全体→「全」、樹脂添加剤→「樹添」、情報・電子→「情電」、機能化学品→「機能」、食品→「食品」、ライフサイエンス→「ライフ」
  • 分類 シナリオ 主要なリスク・機会 対象
    事業
    概要 時間軸 影響度※ 対応策
    移行
    リスク
    1.5℃/
    2℃未満
    規制の強化 炭素税の導入、炭素価格の上昇 中~長期 事業ポートフォリオの見直し
    サプライヤーへの排出量把握・削減の働きかけ
    インターナルカーボンプライシングの活用 等
    原材料価格の高騰 気候変動に起因する価格上昇
    持続可能な認証原料使用によるコストアップ
    中~長期 調達地域の多様化、代替原料の研究開発 等
    原燃料の脱炭素化 再エネ調達に伴う追加コスト発生 短~中期 再エネ調達に関する検討、省エネ投資 等
    レピュテーション(評判)リスク 気候変動対応の遅れによる評判悪化 短~中期 取組み内容の情報開示 等
    顧客ニーズの変化 樹添
    機能
    EV化による内燃機関車の需要減 中~長期 次世代モビリティ向け部材提供推進
    製品ポートフォリオの見直し 等
    物理
    リスク
    4℃ 異常気象による影響(サプライチェーンの寸断・停滞) 風水害の激甚化による、生産活動や物流の停滞 短~長期 事前対応強化(在庫水準見直し、複数購買化等)
    代替原料の研究開発 等
    異常気象による影響(渇水) 樹添
    情電
    工業用水の不足 短~長期 非常用工業用水の確保策、水リサイクル策検討 等
    機会 1.5℃/
    2℃未満
    顧客ニーズの変化 上記の他 社会の移行に適合した製品(例:環境貢献製品)の需要増 短~長期 新製品開発、研究開発促進、製品ポートフォリオ見直し 等
    樹添 環境対応型樹脂添加剤の需要増 中~長期 需要に即した生産能力拡大、競争力強化
    製品のリサイクルを容易にする素材配合の開発 等
    樹添
    機能
    次世代モビリティ向け製品の需要増 中~長期 次世代モビリティ向け部材提供推進
    製品ポートフォリオの見直し 等
    食品 プラントベースフードの需要増 中~長期 新製品開発、研究開発促進
    需要に即した生産能力拡大、競争力強化 等
    食品 持続可能な認証原料使用製品の需要増 短~長期 環境・人権に配慮した認証原料の調達強化 等
    ライフ 農作物の収量を高める農業資材の需要増 長期 作物保護資材分野、スマート農業関連製品の開発 等
    外部評価向上 気候変動対応の先進性による評判向上 短~中期 取組み内容の情報開示 等

    ※リスク・機会の影響度
    「大」・・・利益への影響が、規模「20億円以上」と想定される
    「中」・・・利益への影響が、規模「5億円以上、20億円未満」と想定される
    「小」・・・利益への影響が、規模「5億円未満」と想定される

戦略(ビジネスチャンス)

下記の5製品群は、気候変動対応の観点から、中長期的に当社グループのビジネスチャンスと判定されました。これらの分野の、より一層の伸長に注力することにより、社会価値と経済価値の同時追求を目指します。

指標と目標(GHG排出削減)

  • 1.ADEKAグループ カーボンニュートラル・ロードマップ

     ADEKAグループとして「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みとして
    ①「2030年:GHG排出量46%削減(Scope1+2)」
    ②「技術・製品の創出によるGHG削減貢献」
    上記①と②を二本柱として推し進める旨を示したロードマップを定めています。

     削減目標の対象範囲は自社グループにおける排出=Scope1✛2としますが、社会のカーボンニュートラルに貢献する製品・技術の創出にも並行して取り組み、市場や社会におけるGHG排出量削減への貢献を目指します。
    (Scope3を含むサプライチェーン全体での排出量は、現時点では精査中であり、算出対象とするカテゴリ選定、排出量精査、削減方針策定などに注力中です。体制整い次第Scope3、サプライチェーン全体含めた排出量削減に努めます)

  • 2.サステナビリティ優先課題「地球環境の保全」のKPI

  • 3.GHG排出量(Scope1,2,3)、排出原単位実績推移

     ADEKAグループでは、GHG排出量(Scope1,2,3) 、排出原単位の実績推移を公開しています。削減に向けて製品の安定供給を維持するとともに、生産効率化などの改善を進めており、社長工場監査および環境・安全対策本部監査にて進捗を確認しています。

  • ADEKAグループ カーボンニュートラル・ロードマップ

    ※当社グループは、2023年5月にGHG排出量の数値を更新いたしました。

指標と目標(環境貢献製品)

  • 4.「環境貢献製品」の開発・提供加速

     ADEKAグループでは、サステナビリティ優先課題の1つである「環境貢献製品の提供」の2030年KPIを「『環境貢献製品』売上高:2019年度比3倍に拡大」と定めています。これはADEKAグループの気候変動に伴うビジネスチャンスの拡大を目指す指標でもあります。

     「環境貢献製品」は、「気候変動対応」「環境負荷低減」「資源有効活用」の3分野のいずれかで社会に貢献する製品・技術を当社サステナビリティ委員会で認定したものです。そして「売上高」を2030年KPIとして位置づけ、進捗をモニタリングしています。中期経営計画ADX 2023の基本戦略「収益構造の変革」の中でも、環境貢献製品の開発・提供を加速し“社会価値と経済価値を同時に追求”することを掲げています。

対応の高度化

  • 1.専門組織「カーボンニュートラル戦略企画室」を設置(2022年4月1日)

     2050年カーボンニュートラルにむけた取組みを全社的かつ機動的に進めるための専門組織を、経営企画部内に設置しました。今や気候変動、脱炭素、カーボンニュートラルにむけた取組みを通じ、社会の持続的成長に貢献しつつ自社も成長していく戦略を語ることは、欠くことのできない社会からの要請です。同室はカーボンニュートラル戦略策定の中心となり、ADEKAグループ全体の活動を牽引しています。

    2.「カーボンニュートラル推進戦略」の策定実行

     2050年カーボンニュートラルにむけ、 GHG削減による長期視点での価値創造にむけて「カーボンニュートラル推進戦略」を策定し、実行しています。推進戦略の詳細検討を行う社内ワーキンググループの設置・運営を通じて、再エネ電力を導入(本社、研究所、大阪支社等の電力。2022年度分より)することを決定したほか、ICP(インターナルカーボンプライシング)の試験運用の開始などを進めています。

    3.TCFDシナリオ分析の深化と継続

     今回の分析・評価結果の事業戦略への組み込みを推進する一方で、シナリオ分析の内容のブラッシュアップを継続していきます。

     今後、持続的な企業価値向上に資する一連の取り組みを通じて、外部環境や市況の変化を見据えながら、定期的に、気候変動シナリオ分析において特定したリスクと機会を確認・更新し、それらの影響度の測定、指標と目標の具体化・充実化、事業戦略への反映等を図りながら、適宜ステークホルダーの皆さまへ情報開示し、説明責任を果たしてまいります。



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