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CSR

第三者意見

変革のギアをあげるとき

郡 昭夫

高崎経済大学 経済学部 教授水口 剛 高崎経済大学教授。博士(経営学、明治大学)。専門は責任投資、非財務情報開示。1997年高崎経済大学経済学部講師、同准教授を経て2008年より現職。環境経済・政策学会監事、環境省・グリーンボンドに関する検討会座長、ESG金融懇談会委員などを歴任。著書に、『サステナブル・ファイナンスの時代―ESG/SDGsと債券市場』(編著、きんざい)、『ESG投資―新しい資本主義のかたち』(日本経済新聞出版社)、『責任ある投資―資金の流れで未来を変える』(岩波書店)などがある。

変化するものが生き残る

 トップメッセージの中で城詰社長が「唯一生き残ることができるのは変化できるものである」とのダーウィンの進化論の言葉を引用されています。私も賛成です。そして、今ほど変化が求められる時は他にありません。昨年末に欧州委員会が「グリーンディール」と題した政策パッケージを公表するなど、グローバルレベルで産業構造の変革が始まっているからです。変革の方向は脱炭素、サーキュラー、生物多様性保護です。

 たとえば環境貢献製品として紹介されている「アデカサクラルーブ」は、車の燃費向上を通してCO2削減に貢献する優れた成果です。ただしカリフォルニア州が2035年までにガソリン車の販売禁止を打ち出しましたし、EUタクソノミーでも排出ゼロの車しかサステナブルと認めない方向ですので、長い目で見ればガソリン車そのものが減少していきます。現時点での貢献を高く評価しますが、さらなる変革が必要なことは明らかです。

 また、サーキュラーエコノミーは、より少ない資源を完全に循環的に使い、最終的には資源を地球から取り出す以上に地球に戻す経済の構想です。そこではプラスチックという素材のあり方が1つの焦点になると思われます。プラスチックに様々な機能や性能を付加する御社の樹脂添加剤の技術は高く評価したいと思いますが、今後は特定の環境貢献製品があるというだけでなく、製品ラインアップ全体をサーキュラーエコノミーと整合させていく包括的なビジョンが必要だと思います。それはプラスチック全体の未来を構想し、変革競争をリードすることにつながります。

 さらに、欧州委員会はグリーンディールの一環で、農薬使用量の50%削減を打ち出しました。そのような厳しい規制環境にある欧州市場でも、御社グループの日本農薬は健闘しているとうかがっていますが、今後は一層生態系リスクの小さい農薬や生物農薬分野への進出など、大胆な変革が必要ではないでしょうか。

「S」課題への注目

 新型コロナウイルス感染症は、ESGの「S」の課題への注目を高めました。直接的には従業員を感染から守るためにどういう対策をとったのか、また経済環境が悪化する中で雇用をどう守ったのかが問われます。この点、「4つの安全」の第1に労働安全を掲げる御社は、感染症対策にも適切に取り組んだことが記されています。

 一方、感染症対策を取ろうにも取れない人々の存在は、社会における経済的不平等の問題を浮き彫りにしました。これは社会システムや雇用システム全体に関わる問題で、個々の企業だけで解決できるものではありませんが、経済的不平等という大きな「S」課題に対して会社としてどう向き合うのか、その姿勢を示していくことが重要だと思います。

第三者意見をいただいて

 ADEKAグループのCSR活動に対して貴重なご意見を賜り、御礼申し上げます。

 今回は第三者意見におきまして、当社製品の環境への貢献や技術に対するご評価をいただき、また、持続可能性の観点から様々なアドバイスを頂戴しており、深く感謝申し上げます。

 プラスチックによる環境汚染問題や食料供給の不足・食品ロスは、ADEKAグループの事業と密接な関わりを持っており、グループ一丸となって技術を結集し、解決に向けて挑戦し続けます。

 また、地球温暖化や生物多様性の衰退が、われわれの経済活動や個々の生活に影響することを認識し、自社製品の生産における廃棄物削減のみならず、ライフサイクル全体での資源循環に貢献していきます。そして、サーキュラーエコノミーの推進を通じた様々な異業種・異分野との連携を図り、イノベーションに繋げていきたいと考えます。

 新しい社会環境に対応した経営基盤への変革を目指していくなかで、今回頂戴したご意見をグループ経営に活かしていき、ステークホルダーからの期待に応えてまいります。

取締役兼執行役員安田 晋



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